「気象病」について
2019年06月11日
院長の平出です。先週末から関東地方もいよいよ梅雨に入りしました。例年のことながら、これから1か月半ほどはジメジメとした天気が続きます。さて、皆さんは「気象病」という言葉を聞いた事がありますでしょうか?厳密な医学用語ではありませんが、昨今よく耳にするようになりました。天気の悪い日、つまり気圧の低い日に体調の悪化を感じる人は多く、こうした天気の悪化に伴う心身の不調を「気象病」と呼ぶそうです。その症状は頭痛や肩こり、腰痛、古傷の痛み、気分の落ち込みなど多彩です(ちなみに花粉症やインフルエンザなど季節によって発症する病気は「季節病」と言います)。
実際、臨床の現場では天気の悪い日(または天気が悪くなる前日)に体調不良を訴える方が多く来院されます。ウェザーニュースのデータによれば、日本人の6割が気圧の低下によって何らかの不調を感じており、とりわけ女性の3人に1人は頭痛や肩こりに悩まされていて、また2人に1人は身体のだるさを感じているそうです。このことからも気象病は女性に多いことがうかがえます。気象病のなかには心筋梗塞などの重篤な病気も含まれますが、私たちにとってより身近なのはだるい、気分の落ち込みといった精神症状、および頭痛、肩こり、腰痛などの痛みの症状です。そしてこうした症状に悩まされるのは圧倒的に女性が多いようです。
低気圧がきっかけで気象病に苦しむ女子が多いことから、昨今では天気に心と体を振り回される女子を「低気圧女子」(もちろん男子もいますが)と呼ぶそうです。女性に気象病が多いのには医学的根拠があり、そのカギを握るのが自律神経系です。自律神経系とは自分の意思とは無関係に働き、体温調整や免疫、血流など生命維持に不可欠な機能を調整している神経系のことです。恒温動物は外気温にかかわらず一定の体温を保てるのも自律神経系のおかげです。そしてこの自律神経系の働きには気圧の変化への対応も含まれます。外気圧に対し、人間の身体は一定の内圧が保たれていますが、急激に気温や気圧が下がると自律神経系が気圧変動に対応できず、体調不調を来すという理屈です。
自律神経系には交感神経系と副交感神経系があり、この2つがバランスよく活発に動くことで初めて身体はベストな状態に保たれます。しかし何らかの原因で自律神経系の働きが低下している、もしくはバランスが崩れやすい状態になっている人は、環境の急変に自律神経系が対応できず、さまざまな不調が心身に表れることになります。もともと女性は自律神経系が月経周期によって大きな影響を受けるうえに、40代以降は副交感神経系の活性度そのものが低下します。一般的に女性の場合、男性に比べて自律神経系が乱れやすいと言われる所以です。しかも現代では男女問わず自律神経系の働きが全体的に低下している人が増えているそうで、現代を生きる女性に気象病が多いのはある意味当然の結果といえるかもしれません。
それでは乱れがちな自律神経系を整え、気象病にかからないためにはどうしたら良いのでしょうか?それにはとにかく自律神経の総合力を上げることが大事です。天気によって行動パターンを変える、腸内環境を整える、適度な運動をする、身体を冷やさないようにするなどの対策を練ることで、自律神経を強化することが出来ます。しかし、それでも症状に改善が見られない場合には、当院で積極的に行っている漢方治療、物理療法、理学療法などが有効です。また、当院では特にホルモンバランスが崩れやすい更年期の女性を対象に、保険適応となるプラセンタ治療も行っています。天気が悪くなるとどうも心身ともにすぐれない、という方はぜひ一度ご相談ください。