芹が谷整形外科クリニックのブログ

これで様子を見ましょう、という医師の真意

2021年10月01日

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光陰矢の如しとはよく言ったもので、あっという間に10月を迎え、今年も残すところあと3か月となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?院長の平出です。さて、本日は日々私が感じている患者さんと医師の「意識のズレ」についてお話をしたいと思います。今まで医療機関にかかって、なんとなく腑に落ちない気持ちになった方にこそ、ぜひご一読いただければ、と思います。皆さんは医療機関を受診し、病名もロクに告げられず、薬を処方され、とりあえずコレで様子を見ましょうと言われたことはありませんか?私はあります(笑)。医師も医師になる前は一般の人と同じですので、こうした経験はいくらでもあります。

患者さんが医療機関を受診する理由は主に二つあると私は考えています。それは①病状に対する不安、そして②この病状をどうにかしてほしい、という想いです。つまり、診断と治療を求めているということになります。これが患者さんのwants(=希望)であることに異論は無いと思います。一方で、医師は自らの知識、臨床経験、そしてある種の勘まで総動員して患者さんの診察を行います。問診票を読むだけで診断がつく場合もあれば、色々調べてみてもなかなか症状の原因が突き止められない場合もあります。医師とて神様ではありませんから、一回の診察で診断が付かないことは少なからずあります。

しかし、症状や考えられる病因、患者さんの背景などから、こういう治療をすればこの病状に対しては完治とは言わないまでも一定の効果が期待できるであろう、ということは想像が付きます。そして万が一その治療が功を奏さなかった場合には除外診断となるため、別の検査や治療に進むことになります。つまり、まずは最大公約数的な治療を行い、症状が緩和しなければ次のステップに進むワケです。もちろん、あてずっぽうに治療を行うワケではなく、十分な医学知識と経験を駆使した上で治療を行うわけですから、実際には80%~90%の患者さんは「とりあえずの治療」で病状が改善します。

「とりあえずこれで様子を見ましょう」、という言葉は一見医師の逃げのように患者さんには映るかもしれませんが、実際には内心ほぼこれで良くなると確信している場合がほとんどです。裏を返せば、様子を見る余裕があるだけ病状は深刻ではない、とも言えます。様子を見る余裕がない場合は、緊急で追加の検査を行う、より高次の医療機関にすぐさま紹介するなど、即座に次の手を打つことになるからです。ただ、そうは言っても「様子を見る」という行為は今すぐどうにかしてほしい患者さんにとってはもどかしく感じられるのもまた事実だと思います。まさにこうしたところに医師と患者さんに「意識のギャップ」があるのかもしれません。

医療の世界では「後医は名医」という格言があります。どういうことかと言いますと、たとえばA医院で診断と治療を受け、良くならなかった患者さんがB医院に行くとします。そうしますと、B医院の先生はすでにA医院で〇〇という診断を受け、●●という治療を受けたが良くならなかったという+αの情報を得ることになります。診断というのは情報が多ければ多いほど正確に行う事ができますから、この時点ではB医師はかなり有利な立場となります。B医師が十分な情報を得た状態で、別の観点から新たに診断と治療を行って、功を奏せば患者さんにとってA医師はヤブ医者でB医師は名医ということになります。しかし、受診した順番が逆なら逆の結果となる可能性は十分あります。これが、「後医は名医」という格言の所以です。

情報過多時代の現代に於いて、患者さんを責めるつもりは毛頭ありませんが、世の中の風潮として押し並べてすぐに結果を求める傾向が強すぎるように感じます。もちろん、情報を収集し、様々な意見を聞くという事も大切ですが、こと健康に関しては経過を見るということは思いのほか大事です。経過が分かれば過去と比べて異変があった際にただちに気付く事が出来ますし、対処も早く行う事が出来ます。また、複数回診察を繰り返すことで、診断の精度が上がる場合もあります。主治医を持つメリットはこうしたところにあります。私は出来る限り患者さんに現時点での診断をお伝えし、とりあえずこれで様子を見ましょう、という表現はしないように努めていますが、かりにそういう風におっしゃる先生がいたとしてもヤブ医者と決めつけるのは早計かもしれません。

実臨床の世界では、豊富な知識と経験を基に、最短のプロセスで診断にたどり着き、有効な治療を行う事が何より重要です。当クリニックは、「早く、優しく、精確な医療」をモットーにしています。効果が無いのに、漫然と同じような治療を行うようなことは致しません。治療を開始し、有効性が認められないようなら次の治療に進むか、精密検査を行うか。いずれにせよ、スピード感を以て次の手を打つことを常に心がけています。繰り返しますが、これで様子をみましょう、とういのは決して悪い事ではありません。しかし、様子を見っぱなしというのはマズイです。効果のない治療を漫然と続けるのは医療経済学的にも絶対に避けるべきです。病状が変わらないまま、経過が長くなっている患者さんは勇気をもってセカンドオピニオンを求める事も大事です。